投資で利益を上げる人のコツ―「投資したことは忘れてしまう」
・・・と投資哲学の世界では言われていますが、投資を始めると、これが言うほど簡単ではないと分かります。しかし、先進国インデックスなどへの投資でかつ長期積立では、おそらく一番有効な策なのではないかと思います。だから、金融庁がつみたてNISAやiDeCoを推進しているのだと思います。ということで、本稿ではこのコツを心理的な観点で見て、投資のモチベーションを向上させることを考えます。
誰でも利益は嬉しい・損失は辛いもの
投資をしている人は誰でも、利益が出ることは嬉しく、損失があることは苦痛を伴うものです。特にそれは、
- まったく初めてお金を投資したとき
- 大金を一括で投資したとき
に顕著だと思います。
損失が出たときには、
- その後に相場が好転して含み損が解消(プラ転)した時点で我慢できず売却してしまう
→薄利で終わり、場合によっては売買手数料分の損失をする - 相場が好転せずにさらなる含み損を抱えた結果、損失を確定させてしまう
→含み損ではなく、純損失を被る - 大きな含み損をもつことになり、塩漬けしてしまう
→いつ取得額に戻るか分からない不安を抱き続ける。他の投資対象にしておけば良かったと自己嫌悪する
一方で、利益が出たときには
- もっと利益を上げたいと持ち続けるものの、その後間もなく下落して利益が減ってしまい売却してしまう
→薄利で終わる。なぜ高いときに売れなかったのだと自己嫌悪する
というような投資行動を取って、負けて(大きく勝てないで)しまいがちです。このような心理状況では、なかなか投資は継続できなさそうに思います。どうしたらこのような心理状況に勝てるのでしょうか。
損失回避の心理
不確実性のある場において個人が損失と利益をどのように評価するかという理論として、プロスペクト理論というものがあるそうです。
この理論で行われた実験が意味することは
人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向(損失回避性)があるということである。
ということで、
- 目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先する傾向
→損失を怖れるあまり、薄利で売却してしまう
そして、人によっては、リスク商品に投資をしないと肝に銘じてしまう - 損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする傾向
→さらなる損失を怖れるあまり、プラ転したら即売却してしまう
→さらなる損失を怖れるあまり、損失を確定させてしまう
そして、人によっては、リスク商品に投資をしないと肝に銘じてしまう
投資における利益と損失でやってしまいがちなことは、心理学的裏づけがあるということになります。
「損失回避の心理」を克服する心の戦略
戦略の前提
- 個別株投資ではなく、インデックス投資とする
現物も信用もどちらも投資した企業の業績が良くならない可能性がありますが、インデックスであれば分散されており投資元本が0になることはありません。 - 歴史的に景気循環しながらも長期的スパンで騰がっているインデックスを買う
ということで、買う指数は現状でMSCI コクサイやS&P500が妥当かと考えます。これらの指数は過去に零になったことはなく、むしろ騰がり続けています。
戦略手順
- リスクに晒せない金額を決める
我が家のようなサラリーマンかつ30代の家庭では、一般的に半年分の生活費+αあれば大丈夫だとされています。なぜなら、病気になったとしても厚生年金保険などの短期給付や高額療養費制度があり、さらに自治体では子供への特別療養費制度などのセーフティネットが存在しているからです。
ということで、我が家では無リスク資産6割以外の4割をリスクに晒しています。投資しなかったことによる機会損失が大きい気もしますが、少し損失しても「やがて騰がる」と心を安定させることができます。 - ルールを決めて機械的に買う
ルールはドルコスト平均法などの時間分散が心の安定を図るのに有効です。つみたてNISAやiDeCoは、金融庁が優良と認めた投資信託を、時間分散を図りながら定額を機械的に買い進められる制度です。機械的なので、自分の躊躇いを挟む余地なく、意識せずに買い続けられます。なおかつこれらの制度は利益に対する源泉分離課税20.315%が非課税となり、さらにiDeCoは投資金額全額が税控除の対象となるので、損失しない(利益確定しない)限りにおいては損はありません。
我が家の場合、つみたてNISAは毎営業日に、iDeCoとジュニアNISAは毎月に定額を積み立てしています。 - 騰がったら嬉しい・下がっても嬉しいと信じる
騰がったら含み益が増えるから嬉しい、下がると含み益は減るけれども購入口数が増えるから嬉しいと信じ込みます。 - 投資していることを忘れる
難しいことのように思えますが、利益と損失を繰り返し、継続して積み立てながら損失が減るのを経験し、やがて損失しない期間が増加してくると、気にならなくなってきます。初めに強気相場で積立を開始できたことを幸運に思っています。一方で、まだ地獄を知らないだけかも知れませんが。また、自分の分、妻の分、子供二人の分をすべてNISAで長期積立投資をしていると、一人ひとりの額の変動があまり気にならなくなります。
おまけ:私の米国株取引の場合
私は米国株も取引していますが、こちらも基本的には同じです。しかし、自分で為替・株(ETF)のテクニカル的なタイミングを読まなければならず、心理的な負担が大きいのが悩みです。下手な私は、円安のピーク時にドルを買ったり、配当があまり出ないグロース株や指数を「高く買ってしまう」ことが多く、買った後にいきなり何%も損失して心を乱してしまうことが多いです。しかし、一時的に損失したからといって損失の確定はしません。一度買ってしまったら、プラ転するのを我慢して待ちます。
なお、同じような人が多いからでしょう、SBI証券では株を定期買付するサービスがあります。
「我慢して、買わずに底を待つ」というのは、株取引で最も難しいことではないでしょうか。私は、株価がより高くなることを怖れるあまり、成行で買ってしまうことが殆どです。指値注文をして底値で買えるコツが知りたいものです。
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cden.hatenablog.comピケティ「21世紀の資本」によれば、歴史的に全世界の資本の年間収益率は世界経済成長率(2017年は3.6%)よりも高くなっています。したがって、株を長期保有すればするほど利益が増え、リスクが減るはずです。
cden.hatenablog.com過去のインデックスのパフォーマンスで未来を予測することは不可能ですが、実績として歴史的・長期的には右肩上がりです。この実績は長期投資を続ける上で強力な心の支えになります。
cden.hatenablog.com投資信託の積み立てにおいて、下がってから騰がって元の基準価額に戻るだけで利益になることが自分のつみたてNISA口座で確認できました。理論的には、下落する期間が長くなっても同様なので、リセッションへの心構えとして活用できます。
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