東京は緊急事態宣言中ではありましたが、実車研修のため、東京へ行ってきました。
ドライビングサポーターとは
過去記事がありますので参考にしてください。
オリンピック・パラリンピックでは、輸送(フリートサービスといいます)は重要な役割の一つです。なぜなら、選手たちが競技を行うためには、選手が単に会場に集まるだけでなく、審査側の各競技団体(IF: International Federation, FIFAなど)の人たちや各国のNOC, NPC(オリンピック組織委員会、パラリンピック組織委員会)の人たち、組織委員会の人たち(OF/PF:バッハ会長はじめとする組織委員、都などの自治体、国、民間企業などからの出向組の人たち)、メディア、マーケティングパートナーなど様々な人たちが裏方として動くことで行われるからです。
我々ドライビングサポーターはこのような、選手以外の方々をホテルや選手村から各会場へ輸送することが任務です。
私の役割は「ドライビングサポーターA」といって、トヨタのMIRAI、プリウスPHV、ノア ハイブリッドカー、ヴォクシー ハイブリッドカー(2WAY アクセシブルカー含む)に乗ってステークホルダー(大会関係者)である各競技団体(IF)の人たちを運ぶことです。
実車研修の会場「築地デポ」とは
車両基地・運行管理拠点は東京都中央区の築地市場跡地、通称築地デポにあります。この敷地は市場跡地だけのことはあって広大で、オリンピックロゴの入った大会運営車両のための駐車場、選手を乗せる全国観光バス(委託)車両、バッハ会長などVIPを乗せるレクサスなどの駐車場となります。運行管理建物はプレハブでしたが非常に広いです。ドライビングサポーターは築地デポや選手村などの拠点を起点として活動することになるとのことでした。
築地デポの入口。奥に管理拠点のプレハブが見えます。8:30になるとゲートを開けるそうです。オリンピック関係では全般的にセキュリティが厳しく、この写真を撮った時も警備員さんが2名常駐していました。
実車研修の中身
私が参加した実車研修は6/10(木)の9:00~12:30(3.5時間)の回でした。8:30にゲートが開かれたのち、プレハブ内の受付でまずコロナ対策として体温チェック、手指消毒、次に登録番号チェックがあり、研修会場へ通されました。
研修に参加した人たち
研修会場にいた人たちがどのような人たちなのか、私はすごく気になっていました。というのも、今まではTwitterなどのSNS上で投稿されたわずかな情報でしか同志を知りませんでしたし、そもそもドライビングサポーターはボランティア応募の段階から非常に不人気で、2年前の面接(広島開催)では、応募の呼び掛けすらありました。こんな役割はドライビングサポーターだけでした。なので、ある意味すごく気になっていました。
会場に来ていた人60人ほどの内、9割5分が男性、男性の内6割以上がシニア(おそらく60代)、60代未満が4割程度、女性3名ほど、外国人(白人の方)が1名だけいらっしゃっていました。予想よりもシニアが多く、女性が少なかったです。他国での開催ではまた違った分布になるのかも知れませんが、日本ではやはり車の運転は業務・家庭に関わらず男性が担うことが多いからでしょうね。
全体の流れ
研修の流れの説明、班分け、管制システム(T-TOSS)ログイン実習、ディスパッチ実習(以上が座学)、運転練習、チーム研修、質疑応答、連絡事項、運転記録証明書手続きでした。運転実習は外でやりました。
座学(50分)
座学は輸送(フリート)サービス代表担当者の女性1名と男性1名が講師として説明をしてくださいました。講師の方々は普段企業でバリバリ働かれているのだと思います。プレゼンが非常に上手かったです。2020年6月以来この築地デポでフリート業務を担当してきたとのことでした。
座学では、主にコロナ感染症対策のことを中心に、フリートサービスの役割、車を運転するために必要なアルコールチェックや管制システム端末の操作のことなどを学びました。端末操作は3人1班で行いました。
フリートドライバー用公式テキスト。研修で配布されました。このテキストは前大会(Rio・平昌)から受け継がれ、Tokyo2020大会で改善され、次大会に受け継がれるとのことです。
実車研修(1.5時間)
座学の後、ボランティア1名に対して教習所教官1名(全国各地の教習所から集められたとのこと。私の教官は新宿で法人営業をしている方でした)が同乗し、ノア(アクセシブル車両つまり車いす対応の車両)を用いた実車研修が行われました。
実車研修の内容は、自動車教習所の実技のようでした。まずは教官が見本として駐車場を一周し、その後ボランティアが運転して駐車場一周、クランク2回、駐車(斜めの場合、直角の場合を右・左から)3回やって余った時間で駐車場数周して終わりでした。
教官は私の運転中の様子を基にしてアドバイスをしてくださいました。普段は小型普通自動車に乗っていてノアのようなミニバンはほぼ初めてだったのですが、運転は問題ないと言っていただけました。
注意点として、「だらけて運転をしないのが大切」と言われました。無報酬だがサービスではあるので、誇りをもって運転すべきと受け取りました。
トラブル対応の話
実車研修の後、ドライブ中のトラブル対応についての話がありました。ボランティアは全員ボランティア保険に加入していますが、ドライブ中については自動車保険が適用されます。
自動車保険は大会スポンサーの東京海上日動の総合自動車保険で、記載されている情報は、
- 対人・対物無制限(免責0円)
- 人身傷害保険無制限(搭乗中のみ)
- 車両保険は一般条件(オールリスク)(免責0-0万円)
- 弁護士費用不担保
- ロードアシストサービスあり、Drive Agent Personal(東京海上日動の自動発報機能付きドライブレコーダー)
といった感じでした。ふつうの契約内容ですね。
私がトラブル内容で気になったのは、搭乗中の事故について、組織委員会がしっかり責任を負ってくるのかどうかということですが、そういったことについてはあまり説明がありませんでした。基本的に我々ドライビングサポーターは大会運営者側と雇用契約を結んでいないので労災もないでしょうし。
搭乗中の交通違反については運転者が責任を負うというのは記述がありました。これについては当然だと思います。
いずれにせよ、自分の車両ではないので、制限速度を守ってノロノロ安全運転に徹するつもりです。
スマホ端末操作の実習
ドライビングサポーターは運転当日、トヨタ製統合管理アプリT-TOSSシステム搭載のスマホ端末が貸与されます。このスマホアプリを用いて自分の一日の予定を把握したり、開錠・施錠したり、警察・消防・保険会社に連絡したりといったことをする予定になっているとのことでした。
実際に端末を使って車の鍵を開けたり、施錠したりしました。
質疑応答・連絡事項
最後、プレハブに戻ってコロナ感染症対策として、研修後14日間以内に陽性であった場合、フリートチームに連絡を入れてほしい旨の説明がありました。なんでも、同じグループの人に陽性者がいた旨の連絡をしてもらえるとのことでした。
まあ基本的に実車研修中に濃厚接触した人は皆無でした。全員マスク着用していましたし、密な空間は実車研修中含めてありませんでしたし、ソーシャルディスタンシングしていましたしね。
運転記録証明書の委託手続き
連絡事項説明の後、運転記録証明書の委託手続きのお願いをされました。
軽微な交通違反をした人ならば、ドライビングサポーターとしての活動は問題なくできる(実際、この説明をしていた人も軽微な違反はたくさんあるとのことでした)が、酒気帯び運転や免停にあった人などはドライビングサポーターであっても自動車に乗らない任務にあたる可能性があるとのことで、運転記録証明書の発行に協力してほしいとのことでした。
タクシーや宅配ドライバーの採用試験みたいですね。確かに免許証の色だけでは運転記録は把握できませんから、こういった書類を組織委員会が欲しがるのは分かります。
少しモヤモヤするのは、我々のこういった個人情報は欲しがる(しかも雇用契約すらないのに!)くせに、我々の制限はかなり厳しく掛けているということですね。
終わりに
実車研修が終わったので、あとはボランティア当日に行くのみとなりました。私の場合、オリンピック開会式前の2~3日間しか参加できませんが、大会スタッフの一員として大会運営に携わり、楽しみたいと思っています!
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