自立を願う父さんのお金教育

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東京オリンピック・大会ボランティア:ドライビングサポーター(輸送)活動と新聞報道について

はじめに

2021年7月21日~7月23日の3日間だけでしたが、念願の東京オリンピックの大会ボランティア(通称Field Cast、都市ボランティアCity Castもあるので分けて記載)に参加してきました。私は役割は何でも良かったので、一番人気のない「輸送」を選択しました。結果としては大変有意義な3日間となりました。本稿では、輸送ボランティアに興味のある人向けに活動内容を記しておきます。

輸送(ドライビングサポーター)とは

大会ボランティアの役割は多岐に渡っています。

olympics.comその中でも、普通自動車免許が必要で、大会車両に乗って東京近郊を走るのがドライビングサポーターです。

お客さんを乗せますが、営業ではないので二種はまったく求められませんでした。私も二種免許は所持していません。

大会車両は自動車保険に加入しており、ドライビングサポーターのテキストによると、オリンピックパートナーの東京海上日動自動車保険(契約条件はごく一般的です)に加入しています。

事故を起こしたときの責任は、当たり前ですが、運転者であるドライビングサポーターが負うことになります。ドライビングサポーターは皆理解した上で運転されていると思います。

誰を運ぶか?

オリパラで提供される輸送サービスのことをフリートサービスと言います。フリートサービスの実現には首都高や一般道の大規模交通規制などを伴うため、オリンピックと関係ない人にも大きな影響が出る、重要度の高いサービスであると言えます。

フリートサービスに関わるのはプロドライバーさんと我々大会ボランティアです。プロドライバーさんと大会ボランティアの役割は明確に分かれているようでした(中の人ではないので明言できません)。

  • 担当する時間帯:プロは深夜・早朝帯も含む
  • 運ぶ人:プロは選手やバッハ会長などVIPを運ぶ

東京オリンピックでは、選手は全国から集まった観光バスの運転手さん(プロドライバー)が運びます。報道で目にした方も多いと思います。地方(岐阜や愛知)からのバスも、車両基地である築地デポで見ました。築地デポでは毎日のようにバスが来て、バス運転手に研修が行われているようでした。

大会ボランティアが運ぶのは大会関係者です。具体的には、NOC/NPC(オリパラの組織委員会の人)、IF(各種国際競技連盟の人)、メディア、OF/PF(オリンピック・パラリンピックファミリー)、MP(マーケティングパートナー)の方々ということになります。

フリートサービス提供側では、運ぶ人たち毎にチームが作られているようで、私が属したしたのはIF(各種国際競技連盟の人を運ぶ役割、全33団体)チームでした。

コロナ禍のため、大会関係者の動線を大会関係施設内に封じ込める「バブル方式」を採る際には公共交通機関は使えないので、フリートサービスの役割は非常に大きいと考えられます。

私が3日間で運んだ人たちは以下の通りです。

  • FINA国際水泳連盟)の人たち。金メダリストの某元スポーツ大臣ご一行やポルトガル水連のプレジデントといった面子でした。彼らも十分VIPな気もしますが、実際、大会ボランティアが運んでいました。
  • FIG(国際体操連盟)の人たち。
  • 国際テコンドー協会関係の人たち。

某元スポーツ大臣さん以外は全員外国人の方々でした。

どこに行くか?

私はIFチームに属していたので、IFチームで体験した内容となります。

IFチームのボランティアが乗る車両は、各IF団体に割り当てられた車両となります。噂では、IF団体が大きければ大きいほど割り当てられる車両も多いということでした。

車両にはナンバープレートがあるように、大会車両には固有の番号があります。

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写真は私が乗った給水素中のトヨタ・ミライです。ボンネット右側の「IF ****」がIFチームに属する車両であること、ピンク色のシールが大会優先レーンを走行できる印になります。

IF団体の人たちは、基本的に宿舎となるホテル(競技会場の近くに設定されているようです)と競技会場に行くことが多いようでした。ホテルは都内の様々な有名ホテルが割り当てられていたようです。例えば私は3日間で

に行きました。

また、競技会場については、各大会車両毎に進入が許可される競技会場と駐車位置が定められていました。例えば、

という感じでした。

車両検査場(VSA)

各会場では車両検査場(VSA)という、車で会場内に入るための施設があります。これは自衛官が担当しており、オリンピックのテロ対策を体験できました。

ドライビングサポーターにはVSA権限が与えられており、VSAを通過することができます。そのための検査は流石自衛官が行うだけのことはあり、

  • 乗員全員が降車して手荷物検査(空港と同じでX線検査)を受ける
  • 運転手(ドライビングサポーター)がボンネットを開けて危険物チェック
  • 助手席、後部座席、トランクを開ける
  • 飲料があれば一口飲むように言われる

と、厳密なものでした。

何に乗るか?

大会ボランティアが乗る車はトヨタ・ミライ、トヨタ・プリウストヨタ・ノアトヨタ・ヴォクシーでした。ノアとヴォクシーは普通の7人乗りの他、アクセシブル車両として車いすに対応した車両があるということでした。参加したのがオリンピックのみだった私はアクセシブル車両は見ませんでした。

ミライに乗れたのは良い体験でした。運転席のシートの位置調整がモーターで調整できるようになっていて、シート高さを高くすることができるようになっていました。こういった機能は近い将来エントリーモデルにもつけてほしいところですね。

水素ステーションで給水素するのもなかなかない体験でした。ガソリンはタンクからくみ上げて車のボンベに充填するだけですので1台の機器で連続して重点が可能ですが、給水素の場合、水素を車のボンベに充填すると水素ステーションの充填タンクの圧力が下がってしまい、圧力を回復させるのに10分程度待たなければならず、どうしても待ち時間が発生するということでした。なお、給水素自体の時間はガソリンよりは時間がかかるものの、5分程度で終わりました。

ヴォクシー満タンで航続距離700km弱、ミライ満タンで500km弱という表示でした。現状、遠出するには少し心もとないかなと思います。

ボランティアの一日の活動の流れ

  1. オフィス(築地デポ)到着
  2. ディスパッチ(呼気アルコール検査)
  3. チェックイン(ディスパッチ結果の確認、アクレディテーションカード読み取り(交通費相当のVISA電子マネーのチャージ登録)、クーリングシート受け取り、ミールクーポン受け取りなど)

  4. 配車予約担当のための待機
    IF団体から入った前日夕方までの配車予約をボランティア1名が担当するようでした。コロナ禍対応でIFの派遣人数は絞られていたようです。「ボランティアの辞退が相次いだ」という報道もありましたが、ドライビングサポーターは余裕人員が十分あったため、配車予約にありつけないドライビングサポーターが多かったです。中には2日間活動の内、1回も配車予約にありつけなかった人もいたようでした。ただしこれはオリンピック開会式前の7月21日~23日の間の話です。
  5. 配車予約の説明を受ける
    私の参加した7月21日~23日では、トヨタの配車システムT-TOSSが使えないというトラブルがありました。お隣のT3チームでは使えるのにもかかわらず、IFチームでは使えないという謎のトラブルでした。トヨタの責任ではなく、運営側のミスですね恐らく。IFチームではT-TOSSシステムを使えるように直すのではなく、口頭、メモ、運営側システムのPC画面のカーボンコピーや印刷で乗り切るというローテクぶりで、少々疑問がありました。
  6. 送迎場所まで行く
    ホテルが多かったです。ホテルの正式名称が分からないとナビの目的地登録ができず間違えた場所に行きかねないので、とにかくホテル名には注意しました。グランド~とか、プリンス~などの名前が多く、混乱しました。
  7. 競技会場まで送る
    ナビは「東京2020ルート」という、首都高などでピンクの看板がある特別なルートを通る条件で検索されていました。割と短距離であっても首都高を通るルートでした。
    競技会場の駐車場は、どこでも停められるというものではなく、IFならばIFの駐車場またはP3・P6という駐車場などと決まっていました。
    御覧のように、一日の間であっても、色々な所へ行きました。

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  8. 競技会場で待機or築地デポに戻る
    会場で待機の場合、2時間から3時間の場合もあり。待機時間が長くなった場合、他のドライビングサポーターと現地で交代するようになっていました。
    交代する場合、公共交通機関を使って移動しました。
  9. 休憩・食事
    休憩は待機の間にとりました。競技会場にはトイレや大会ボランティアが利用できる部屋があり、そこで休憩することが出来ました。食事は、弁当が提供される代わりに全国のガストなどすかいらーくグループの店で使えるミールクーポンが提供されました。弁当については、大会ボランティアが食べられずに廃棄されるという事案が報道されていますので、ミールクーポンは良いアイディアと思いました。
  10. 給油・洗車
    特にミライの給水素は気をつけなければなりませんでした。大会スポンサーのENEOSの給水素ステーション数が築地デポ周辺で6か所程度しかないにもかからわず、大会車両として使うミライだけでもかなりあったので、給水素の前には予約が必要でした。実際には、予約しないでも給水素ステーションは受け付けてくれたようでした。

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    ENEOS水素ステーションにて。

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    給水素中。

    なお洗車は、「一番安いコースを選択する」ように運営側から言われていました。ジャブジャブの割に洗車は妙に経済的な指示でした笑。
  11. チェックアウト
    チェックインした築地デポでチェックアウトします。チェックアウトの際、大会車両の鍵、ENEOSのビジネスカード、給油・給水素や洗車をした場合のレシートなどを入れたポーチを受付に返却し、同時にディスパッチ結果も提出します。これで一日の活動が終了となります。

持続可能な、エコな輸送?

ドライビングサポーターとして参加して、仕方がないにせよ、少々疑問に思ったことがありますので記しておきます。

それは3日目、テコンドーのIF団体のために幕張のホテルでピックアップした後、東京ビッグサイトに行った時です。

もしテコンドーのIF団体の方々が大会車両を使わずに済むならば、幕張と東京ビッグサイトを往復すれば良いだけで、電車で済みます。一番ECOだと思います。

実際には、築地デポから大会車両が出庫し、幕張に向かった後、東京ビッグサイトに行き、また幕張のホテルに戻り、さらに築地デポに戻るという、一連の移動でガソリンを10l弱使う移動となりました。乗せた人たちは幕張とビッグサイトを往復しただけです。これは全然ECOではないです。

この頃のIFチームではオンライン配車システムのT-TOSSが使えなかったので、こういった状況を生んだのだと思います(T-TOSSが活用されていれば、幕張からの帰りにも誰かを乗せられたかも知れません)。また、コロナ対策でバブル方式だったので公共交通機関が使えず、仕方がなかったというのもあります。いずれにせよ東京2020大会の理念から乖離する、残念な現場でした。

輸送についての新聞報道について

輸送については下記のような報道がありました。

news.yahoo.co.jp朝日新聞の報道ということで正確性のために身構えますが、現場にいた身としては概ね頷ける内容となっています。

 大会関係者の専用車両の配車システムも機能せず、「何時間も待たされた」という報告が複数上がっているという。

 これは、IFチームでも起こっていたことです。私も結果的に「何時間も待たせた」側でした。

 組織委によると、都内の道に不慣れなドライバーがいたり、選手の移動のピークに合わせて適正な台数のバスを配車するオペレーションが機能しなかったことが原因という。

「不慣れなドライバーがいたり」と書いてありますが、大会中に使うバスの台数というのは何百台レベルで、地方のバス会社のバスの方が多かったと思います。オペレーションというのは、T-TOSSのような専用システムでしょうね。

惜しむらくは、大会開始までに十分なシミュレーションをしていればこのような事態は避けられたのではないかということです。

交通事故を起こしたという報道について

news.yahoo.co.jpこの事案はとても残念です。人身事故なので、運転免許をもつ人間として救護義務があるにも関わらずひき逃げしています。

車にはほかの大会関係者も乗っており、男性は「送迎を優先した」などと説明したという。男性は体調不良を訴えて医療機関で治療を受けており、警視庁は回復を待って事情を聴く。

とあり、かなり急いでいたことを伺わせます。同乗の大会関係者の様子を見てかなり焦ったのかも知れません。それで事故を起こし、なおかつ逃走してしまったのだと思います。

大会車両で事故って「大変なことをしてしまった」と思いながらの逃走だと思います。ボランティアという無償労働中での事案なのである意味では可哀想なのですが、ドライバーとしては失格ですね。一種とか二種とか関係なく。

私がこの運転手だったら、遅れても無償ボランティアだからオリンピック組織委員会などから懲戒を受けることはありません。また、配車手続きが遅い場合、客を待たせることは出発前に分かる場合もあります。配車手続きの遅れはドライビングサポーターの責任ではなく、フリートオフィスの責任です。なので、謝りながらも飛ばさず安全第一で到着地まで連れていくことを考えます。

なお、ボランティアが乗る車両には、東京海上日動ドライブレコーダーが取り付けられており、衝撃の際には自動で問い合わせセンターに電話がつながる機能を有していますし、築地デポのフリートオフィスでもGPSで大会車両の位置をモニタリングしているので、事案発生および運転手、同乗者を即座に把握したと思います。

この「ひき逃げ犯」もそれを知っていたはずです。実車研修でやりましたから。なので、そもそも逃げる必要性はなかったと感じています。

逃げたら罪が大きくなるだけですから。

「ボランティアに輸送をやらせるのは危険」という意見について

日本では、営業として客を乗せて運賃を取るために二種免許があります。運賃を取らないならば二種免許は不要です。これは法的に言えることです。客と契約を結んでいないのであれば二種は不要です。その上で、タクシーにやらせれば良いという意見も聞きますが、タクシーの運転手さんもボランティアと同じ場にたくさんいました。タクシーの運転手さんが大会車両に乗って運転していたということです。

ボランティアもドライバーをするというのは、おそらく今までのオリンピック大会でも同様だったと思います。Tokyo2020大会はRioおよび平昌大会の運営方式を参考にしていますので。

すべてのドライビングサポーターが東京の道路を知らないということにはならないです。私が接したドライビングサポーター(多くが男性、50~60代)は東京在住の方が多く、私のような地方在住の方は少数でした。

「地方の人間には首都高は無理では」という意見も散見されます。地方在住者であっても、指定方向外進入禁止や一方通行など、都心の癖のある道路事情に気をつける必要がありますが、普段から乗っている人であればどうということはないです。搭載されていたナビは走るべき車線も案内してくれますので、ナビに従えば安全に運転できます。

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実際のナビの画面です。

結局、事故を起こした運転手のドライビングサポーターの方の資質なのだと思います。事故ったら救護して119番通報、110番通報するのはオリンピックボランティアに活動中だからといって関係ないので。

本事案では幸い死者は出ておらず、不幸中の幸いだったと思います。個人的には、この「ひき逃げ犯」には捕まってそれなりの刑罰を受けて反省してもらいたいと思っています。その他大勢の頑張っているドライビングサポーターの皆さんが気の毒ですので。

おわりに

東京2020大会で輸送を担当するボランティアであるドライビングサポーターの活動内容について紹介しました。輸送は大会関係者を運ぶ重要な役割ですが大会の表舞台にはまったく現れないので、こんな役割もあるのかという感じですね。

私は当初は3日間だけではなく10日間以上やる予定でしたが、コロナ禍で地方から参加組にはかなり厳しくなってしまいました。それでも、たった3日間の活動でしたが、オリンピックの参加者となり、オリンピックの車両で東京を走るという経験は、今後そうそうないと思っています。無事故で済みましたしね。

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