高専に就職し,色々な方々に助けて貰いながら仕事を覚えて,
無事6ヶ月が経過しました.
試用期間があるのかどうか定かではありませんが,自分としては,居心地の良さを感じています.
高専というのは,大学・短大など他の高等教育機関や小中高などの初等・中等教育機関と比較して
学校数が桁違いに少ないので,その実態は余り知られていないのではないかと思います.
まして高専教員となると,尚更だと思います.
そういう実態を鑑みて,当ブログではちょこちょこ高専教員について書いている訳です.
1.就職の口としての高専教員と大学教員の差
世間的には,高専の方が給料は少し少なくて,職位が同じ教授でも高専は一段階低いとされています.
そして,研究よりも雑用が多いというのがネットで出回っている高専教員の定説です.
研究に充てる時間を食い潰す“雑用”…
2chなどのログを漁ると,“ガキのお守り”という表現が多用されますねw
これは,ある意味合っているなあと思います.(多分実際の高専教員が愚痴を吐いているでしょうからね)
博士号を目指す人の多くは研究職に就くがために必死に博士論文に取り組む訳で,
大雑把に表現すると,研究以外の職務は邪魔なんだと思います.
子供の世話とは,様々な研究・授業以外の校務を指し,当ブログでも度々触れているとおり,部活動の顧問や寮務,担任,果ては遠足の引率などがあります.
これらは,高専教員にとってなぜ校務なのか.
詰まるところ,高専は技術者養成機関であり,教育機関として全人教育を実践していることがその理由です.
(これら二つのポイントは中教審でもたびたび高専の特徴として議論されています)
この点で,同じ高等教育機関でも,大学・短大とはまるっきり違うと思います.(短大,大学に勤めた訳ではないので推察ですが)
高専の意義を理解せずに就職してしまい,将来的にも賛同できない研究志向者は,きっと就職してから大学に転職したいと思うでしょう.
高専の公募要項には,以下の文章が必ず明記されています.
「高等専門学校の教育・研究及び学生指導(学級担任,クラブ指導など)に熱意のある方」
この一文を軽く見るか,重く見るかで高専教員の適性が測れると思います.
重く見る人・大事だと思う人は,高専教員に適性があると思います.
このように,大学と高専は,どちらも研究がやれて,教授などの職位があり,福利厚生もほぼ同じなのですが,大きな差があります.
2.地域へ優秀な人材を輩出する役目としての高専
国立高専は全国に51校,殆どの都道府県に1校はあります.つまり,高専は国策で設置されました.
現在まで,産業界が求める技術者を輩出するのが高専の役目です.
この場合の産業界とは,高専が都道府県に1校程度という数からすると,県内・あるいは県を跨いでも産業的に結びつきが強い地域内の産業界を指しているものと思います.
高専教員の研究は,純粋な学術的研究(学生に学問を教えるための,自身の学問追求のため)の他に,地域産業との共同研究・受託研究が重要視されています.
地域に対して高専が如何に高い技術的な支援を行うことが出来るかが問われ,
そしてその支援を基に産業界が競争力が高いモノを作り出し,地域の富を殖やすことが出来るかが期待されています.
田舎高専の我が校でも,最近は高専卒業者は都会や県外に就職する人が多くなっていますが,
地元の有力企業に就職する人も依然多く,喜ばしいことだと思います.
優秀な人材こそ地域の富に他ならないでしょうから.
現在,産業の空洞化・田舎の過疎化・少子化・国際化にある我が国において,
高専の役割はいっそう問われています.
教員も一枚岩ではありません(寧ろバラバラと言うべきでしょうか).
私も,高専の意義には賛同しますが,高専生はその高い教養と技能でもっと県外・海外に出て行くべきだとも思っています.
(でも,私自身は地方分権社会,地産地消の社会こそがこれからの我が国の目指すべき姿だと思い,地方に移り住んできた訳ですが)
高専が設置されて今年で50年を迎えました.
高専のあり方は,今後とも難しい課題なのだと思います.
私も,機構の一職員として,もっともっと考えていきたいと思います.