レバレッジ・バランス・ファンドとは
行動心理学の「プロスペクト理論」によると、お金は増えるよりも減る方が痛みを感じるといいます。アメリカの投資会社・ブリッジウォーター社代表のレイ・ダリオ氏は“株式は債券と比較して3倍リスクが高い”として、オールウェザー・ポートフォリオを提唱しています。この場合のリスクは標準偏差のことで、「株式の値動きの幅は債券の3倍である」ということです。
したがって株式の値動きは、元本割れが恐いと感じる人にとっては暴力となりえます。
レバレッジ・バランス・ファンドはこのような株式のリスクに対抗して長期保有するために生み出された投資信託と言えます。
レバレッジ・バランス・ファンドの特徴
レバレッジ・バランス・ファンドの特徴は下記のようなことです。
- 株に対して逆相関する傾向にある債券にレバレッジを掛けることで株のリスクを大幅に相殺している
- 複数の資産を組み合わせるバランスファンドであり、リバランス不要である。
- 現代ポートフォリオ理論における効率的フロンティア曲線上の資産配分にレバレッジを掛けることで単一の資産クラスを凌駕する高いシャープレシオを実現しうる
- 投資信託としてはレバレッジしているが、買っている個人投資家が証拠金を差し入れる必要はなく、資金の効率性が高い。
私もグローバル3倍3分法ファンドと楽天・米国レバレッジ・バランス・ファンド(USA360)という2つのレバレッジ・バランス・ファンドを保有していますが、「あまり下落せず、騰がりもゆっくり」なので、保有前よりも心理的負担はかなり減りました。
レバレッジ・バランス・ファンドの弱点
レバレッジ・バランス・ファンドの弱点は以下のようなものが考えられます。
- 利上げ局面
- 株式と債券の逆相関性が弱いとき
債券は一般に株式暴落時の資産逃避先として用いられますが、今後の経済状況では当てはまらなくなる可能性があります。
また、利上げ、つまり、政策金利の引き上げ(利上げ)によって金融引き締めが起こった場合はどうしても下落します。
- 株式市場から資金が引き上げられる。 → 株価下落
※金利や為替と株価の関係│はじめての株式投資│SMBC日興証券 - 債券の利回りが高くなる。 → 債券価格下落
※債券の変動要因 | 極東証券
したがって、利上げタイミングではレバレッジ・バランス・ファンドの基準価額が大きく下落する可能性があります。
実際、2020年2月現在、直近の米国利上げ(2018年12月18日~19日FOMC発表、2.00~2.25%から2.25~2.50%に引き上げ)を経験したグローバル3倍3分法のチャートを示すと、
青色:グローバル3倍3分法ファンド(1年)
ピンク色:eMAXIS Slim 先進国債券インデックス ※債券先物の代替
緑色:eMAXIS Slim 先進国株式インデックス
(見てほしいのは、2019/1の前の下落です)
12月18日以前から、利上げ観測を織り込んで先進国(米国)の債券と株式共に下落しており、グローバル3倍3分法ファンドは最大10%下落しています。ただし、先進国株式は最大12%下落しており、国内外REITも組み込まれているグローバル3倍3分法ファンドの分散性がよく効いています。
いずれにせよ、利上げの後、株価も債券価格も上昇しており、グローバル3倍3分法ファンドの基準価額は先進国株式をアウトパフォームしています。
レバレッジ・バランス・ファンドにとって利上げは「買い場」と見なせます。
ただし、大規模な信用収縮が起こって、特にレバレッジが掛かっている債券先物が大幅下落する場合、差し入れる証拠金がファンド資産を大きく損じることが考えられます。そのようなときも基準価額が大きく下がりますが、おそらくそのようなときは株式市場含めて大暴落しているでしょうから、考えても無駄でしょう。
低コストレバレッジバランス・ファンドのチャート比較
ここでいう低コストは信託報酬1%未満のファンドのことをいいます。具体的には、
- グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型) 2018年10月1日新規設定
- ウルトラバランス世界株式 2019年8月23日新規設定
- 楽天・米国レバレッジバランス・ファンド(USA360) 2019年11月5日新規設定
- ウルトラバランス高利回り債券(年2回決算型)2019年11月22日新規設定
の比較をします。
全投資信託の比較
青色:グローバル3倍3分法ファンド(1年)
ピンク色:ウルトラバランス世界株式
緑色:楽天・米国レバレッジバランス・ファンド(USA360)
黄色:ウルトラバランス高利回り債券(年2回決算型)
3カ月弱でしかありませんが、米国経済の強さを背景にしてUSA360が強いです。グローバル3倍は冴えません。これは、グローバル3倍が組み入れている新興国株式が中国・武漢の新型コロナウィルスによる新興国市場の暴落によるものと考えます。
ウルトラバランス株式は金を組み入れており、新型コロナウィルスによる市場暴落に対してパフォーマンスを発揮しました。
楽天・米国レバレッジバランス・ファンド(USA360)設定以来の比較
青色:グローバル3倍3分法ファンド(1年)
ピンク色:ウルトラバランス世界株式
緑色:楽天・米国レバレッジバランス・ファンド(USA360)
黄色:ウルトラバランス高利回り債券(年2回決算型)
USA360は他のレバレッジ・バランス・ファンドを引き離し、11.1%の上昇です。私はレバレッジ・バランス・ファンドもなるべくシンプルな資産構成が分かりやすくて良いと思っていますので、USA360のパフォーマンスが高いのは何となく嬉しいです。
なお、上記4ファンドは下記リンクで比較できますので、この記事が古くなったらご自分で期間をいじってみてください。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/0231118A/chart?compare=97311198,9I31119B,9731119B
関連記事です。
USA360に興味を持たれた方は拙ブログの過去記事がありますのでぜひご覧ください。
USA360は信託期間無期限なので、子供のジュニアNISAでも買付しています。買い付け状況は不定期でまとめていますのでご覧ください。
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