投資信託の先進国株式クラスとして人気のある楽天・全米株式やeMAXIS Slim先進国株式をはじめとするMSCIコクサイ・インデックスはポートフォリオの中心として人気があります。そこで、本稿ではこれらのインデックスと一緒に組むのに適した投資信託を考えます。
先進国株式のリスク
日本円でお金をもらい日本円を使う我々日本人から考えて、先進国株式に投資するリスクは主に
- 為替(円高)リスク
- バリュエーション(割高)リスク
です。目下先進国株式で50%以上を占める米国株が米利下げの影響で円高になり、基準価額が目減りしています。
また、米国株はこの数年間ずっと株価収益率(PER)が20程度と比較的高く、割高傾向が続いています。逆に言うと、お金が集まっているとも言えます。
先進国株をメインに積み立てていると、先進国の株式が買われている内は良いのですが、経済の不安定性や需給バランスの悪化により先進国から資金が流出すると、先進国株の株価は下がります。
流出したお金はどこに行ったか?というと、より収益性の高い、値上がりする資産へ注ぎ込まれたということです。
長期投資において、先進国株は暴騰と暴落を何度も繰り返します。割高と割安を繰り返すのです。したがって、先進国株の長期投資においては、先進国株以外の資産も持ってリバランスする必要があるのです。
先進国株とコンビを組むのに適した資産(インデックス)はJ-REIT
長期投資において先進国株とポートフォリオを組むのに適した資産の条件は、以下のようなものです。
相関係数が低いほど、資産間の値動きの関連性が低くなります。つまり、「連れ下げ」しにくい資産であると言えます。負の相関係数をもつ資産は、逆の値動きをします。
2019年6月時点での各資産間の相関係数のデータを引用します。
※https://www.quick.co.jp/3/article/14318
これを見ると、先進国株式に対して負の相関係数あるいは低い正の相関係数をもつ資産は概ね2つです。
先進国株に対して国内債券の相関係数はマイナス0.26であり、分散性という意味では最も良い選択肢です。しかし、国内債券の利回りは1%未満と低く、高い利回りの円定期預金で代用可能です。
国内債券の次に低い相関係数を持つ資産はJ-REITです。先進国株に対してJ-REITの相関係数は0.41であり、国内債券ほどではないにしても分散投資先として十分価値のあるものです。
ただし、リーマン・ショックなどの金融危機時には信用収縮が生じますので、J-REITも大幅に下落することに注意が必要です。
※https://j-reit.jp/study/foundation/04.html
2007年9月からの下落率は東証REIT指数が最も下落したことが分かります。したがって、J-REITはあくまで安全資産ではないです。
J-REITの利点は高い利回りにある
J-REITの良い点は、その高い利回りにあります。
こちらのサイトでは、東証のETFの利回りランキングが示されています。
※高分配金ETF(東証):利回りランキング | インカム投資ポータル
上位20位のうち、J-REIT ETFは6つ(上場インデックスファンド日本高配当(1698)も含めると7つ)であり、年間配当は概ね3.0%~3.6%と比較的高配当であると言えます。
高い利回りの理由は、
J-REITは資産の運用以外の業務を禁止されており、また東証の上場規程により、保有資産のほとんどを不動産に関連する資産とする必要があります。
また、一般的な会社は、法人税が課税された後に投資家に分配しますが、上記条件を満たした投資法人は、法人税が課税される前に投資家に分配金を支払うことができます。
具体的には、配当可能利益の90%超を投資家に分配することになっており、これが利回りが高いと言われる理由です。
※好利回り投資に欠かせないREIT ETF! | 東証マネ部!
ということです。J-REITならば先進国株が不振のときもインカムゲインを得ながら辛抱強く待つこともできます。したがって、先進国株と組み合わせると良い資産はJ-REITであると言えます。
J-REITを組み込むべきアセットロケーション
先進国株とポートフォリオを組むのに適した資産はJ-REITであると分かりましたが、組み込むべきアセットロケーションはどのようなものがあるかを考えます。これは、
となります。
投資信託
J-REIT投信で選んではいけない投信があります。
分配金を投資元本から賄う、所謂タコ足投信のことです。これらは除外して選ばなければなりません。
また、長期投資で考えると、なるべく配当は出さずに自動で再投資するコースを選択するのが良いです。
※タイプ別ランキング(国内不動産) | 投資信託 | 楽天証券
順位の1、2、4はタコ足投信です。また、なるべく管理費用(信託報酬)の低いファンドを選ぶ必要がありますので、実質コストが高くなりがちなアクティブファンドも避けるべきです。
そうすると、
の4つから選べば良いということになります。これらはすべて東証REIT指数(配当込み)をインデックスとして運用されており、基本的に同等です。実質コストも0.数%の違いであり、どれを選んでも大差はありません。
ETF
特定口座では投資信託だけでなくETFも選べます。ETFは株式と同じで配当金が出るので、インカムゲイン重視の人はETFを選ぶのも良いでしょう。
※https://www.jpx.co.jp/equities/products/etfs/issues/01-07.html
これらは
に連動した成果を得るよう運用されています。指数が同じであれば、信託報酬の細かい差はあれど、どれを選んでも大差ありません。
東証REIT指数
東証のJ-REIT株銘柄すべての時価総額比で構成されています。東証TOPIXのJ-REIT版といった所です。用途別割合と組入銘柄上位10種は以下の通りです。
※組入銘柄 - NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信 - JAPAN-REIT.COM
東証REIT Core指数
2019年3月から算出されています。東証 REIT 指数の算出対象を母集団とし、浮動株時価総額及び売買代金の水準により銘柄を選定しています。
組入銘柄は以下のリンクにあります。
https://www.jpx.co.jp/news/1044/nlsgeu000002z3ro-att/j_reitcore.pdf
野村高利回りJリート指数
2017年11月から算出されています。指数の特徴は
- 全Jリート銘柄の中から予想分配金利回りが高い銘柄(30~40銘柄)を組み入れる
- 予想分配金利回りの高い銘柄のウエイトを高めた非時価総額加重型指数
- 投資可能性に配慮して、時価総額や日次平均売買代金に関するスクリーニングを行っている
- 構成銘柄は原則年1回見直される
※http://qr.nomura.co.jp/jp/nmjr/docs/NMJR_rulebook_20190319_J.pdf
です。なお、組入銘柄は非公表です。
各J-REIT指数のチャート
青線(1597)は東証REIT指数(MAXIS Jリート上場投信)
赤線(2527)は東証REIT Core指数(NZAM 上場投信 東証REIT Core指数)
緑線(1660)は野村高利回りJ-REIT指数
です。6か月程度の比較に留まりますが、野村高利回りJ-REIT指数のパフォーマンスが1~2%程度高いようです。次いで東証REIT Core指数となります。
東証J-REIT指数と楽天・全米株式およびMSCIコクサイのチャート
青線は東証REIT指数((NEXT FUNDS)東証REIT指数連動型上場投信)
赤線はMSCIコクサイ(インベスコMSCIコクサイ・インデックス)
緑線は楽天・全米株式インデックス
です。
この1年間の東証REIT指数のパフォーマンスは米国株と先進国株を凌駕するものでした。また、東証REIT指数と楽天・全米およびMSCIコクサイの相関が低いことも分かります。
10年チャートです。
楽天・全米の代わりにS&P500を用いています。
10年間チャートは大差をつけてS&P500およびMSCIコクサイが勝っていました。
ただし、10年レベルで見てもやはり東証REIT指数はS&P500およびMSCIコクサイとの相関は低いことが見て取れます。
まとめ
先進国株式として楽天・全米やMSCIコクサイとポートフォリオを組むのに適した資産クラスはJ-REITです。J-REITは国内債券よりもパフォーマンスが優れています。
日本は少子高齢社会に突き進み、すでに空き家問題が生じていますが、こと不動産となると、限りある資産のために安定的に価値が上昇するのかも知れません。超長期的にはJ-REITの資産価値も下がるかも知れませんが。
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