日常生活の中で学問に気づき、深めるには、見聞したことを原理や枠組みに当てはめてみて、何らかの納得や新たな疑問点を得ることが重要だと考えています。
論理的に考えられる子供ならば別ですが、殆どの子供は日常生活の中で原理や枠組みに気づきません。したがって、保護者など身近な大人が子供に寄り添って現場で学問に気づかせてやることが、子供の知的好奇心の刺激や知識の拡大には非常に有効だと考えています。
経済は、それこそスーパーマーケットに行ったり、ニュースで毎日為替や株価の情報に触れられるので、興味・関心を向けさせやすいかと思います。
ただ問題なのは、私も含めて、保護者が子供の納得や新たな疑問点の掘り起こしをするのに十分な知識を持ち合わせていないということです。
だから、子供をそれなりに育てたいのであれば、まず保護者が学ばなければなりません。
そんなことで、私も遅ればせながら経済について勉強をしているということです。
レイ・ダリオの「30分で分かる経済の仕組み」
www.youtube.comこの動画は経済の基本的な仕組みを非常にシンプルかつグラフィカルに説明してくれています。2014年5月21日付の日本経済新聞に記事があります。
「30分でわかる経済のしくみ」(http://youtu.be/NRUiD94aBwI)と題したこの動画は、ユーチューブで見ることができる。昨秋公開した英語版は、すでにアクセス件数が百万件を超えた。
ダリオ氏はアニメーション動画を通じて経済の仕組みを解説。借金は将来の自分からお金を借りるのに等しく、借金を返済しようとすると将来の出費が減少する。自分の出費の減少は、他者の所得の減少に等しく、よって経済は縮小する。
金融危機後に起こった日米欧の景気後退はこうした「ディレバレッジ(負債縮小)」がもたらしたもの。ディレバレッジによって景気は減速するが、負債の重荷は軽くなる。これをダリオ氏は「美しいディレバレッジ」と呼び、こうした過程を経て経済は平常状態に戻ると指摘する。日本語版はぜひ日本の金融当局者にも見てほしいという。
私は経済にはかなり疎いので、凄く勉強になりました。ただし、30分では到底理解できる情報量でないため、視聴とキーワードの勉強を継続しています。
本稿では、この動画について私なりの情報整理をしつつ、参考文献として閲覧して勉強になったブログのまとめをしたいと思います。
ナレーションで注意しなければならないキーワード
この動画は日本語版だけでなく、英語版もあり、英語版には日本語の字幕もついています。しかしながら、日本語版のナレーションは英語版の字幕と異なる言葉が散見されます。また、カタカナの言葉で重要な言葉もあります。
- Credit クレジット
→貸し手と借り手との信用に基づく借金(債務)・貸金(債権)
貸し手は借り手の信用に応じて貸せるお金を決めます。借り手に信用力があればあるほど貸し手が貸せる金額が増えます。貸し手はお金を貸すことの対価として利子という報酬を借り手から受け取ります。したがって、信用力が低く(貸したお金が返ってこない可能性が高い)借り手への貸金の利子は高くなります。
動画では、クレジットは経済の好景気と不景気、恐慌を生じさせる主な原因であるとされています。GDPは国内総生産、つまり国内で生み出された付加価値(クレジットと現金(キャッシュ)による取引)の総額です。クレジットとキャッシュはクレジットの方が多いので、クレジットが経済に与える影響は大きいということです。
Youtubeコメントにおけるクレジットに関する疑問と回答が参考になります。アメリカのクレジット50兆ドルで実際の紙幣は3兆ドルと言ってたけど、10倍以上ものお金っていうのはどうやって貸しているのですかね?そのからくりがよくわかりません
決済の考え方を使うとクレジットとキャッシュが同時に理解できます。 決済の定義は日銀ホームページを使用しました。 クレジットの総額は50兆ドル、キャッシュの総額は3兆ドルです。 決済とは、債務と債権におけるキャッシュ(現金)での精算です。 債務と債権は、クレジットと言い換えられます。 決済とはクレジットにおけるキャッシュ(現金)での精算です。 この意味は負債総額が50兆ドルあるのに精算するキャッシュ現金は3兆ドルしか有りませんということです。 47兆ドルは決済できない金額です。 日本銀行のホームページの決済の定義より、47兆ドルをリスクと言います。 アメリカ経済は47兆ドルの決済リスクを抱えているということになります。 リスクには信用リスクと流動リスクがあります。 信用リスクとはお金を返してもらえないリスクです。 流動リスクとは誰かにお金を貸したのですが、返済が遅れたため、手持ちの現金がなく、自分の借金が返済できないことです。 47兆ドルの経済リスクがあるのがアメリカ経済ですと説明できます。 - Human nature→人の知恵、人の性(さが)
クレジットの説明などで言及があります。Youtubeコメント欄では、「人の性(さが)」とした方が良いという意見があります。人の性というのは、「ひととはそういうものだ」ということですね。
経済は人と人との取引の積み重ねであり、取引においてはクレジットが大部分を占めるため、信用が重要であるということと、「人は借金をしていても順調だと思い込む傾向がある(正常性バイアス)」ということですね。株価は群衆心理学が作用していると言えますし、経済は人の心の非合理性が働いているからこそ予測不可能といえますね。 - Leverage レバレッジ
→借入による投資、他人資本を用いて自己資本の利益率を上げること
Youtubeコメントが分かりやすいので引用します。
leverage は、レバレッジでなく、借入による投資とでも訳したらどうだろう?
取引金額を持ち上げる「テコ」と最近思うようになりました。
そもそもleverageの意味がテコですからね!
基本的にその理屈でいいんだけど別に「投資」じゃあなく てもいいというか、投資を連想するから逆にややこしくなってしまう。 多少カッコつけていうと他人資本を使って自己資本の利益率をあげる こと。思い切りざっくりいうと君がビール店(動画の例に出てるから) オーナーだとして自分の手金5000万で経営してたとして、こりゃあ 10%儲かりそうだ思ったら、金利5%でもう5000万借りて店を大きく してセッセと働いたら金利5%返しても手元には500万じゃなく750万 残るよね。つうことは手金5000万で750万儲けたことになって利益率 は上がってんだろ?だから「テコ」。投資の場合に使われるのは 少ない元手で大きく儲けられる理屈が同じだから。
- ディレバレッジ
その他にもたくさんありますが、ナレーションを聞いていて引っかかる言葉はこの程度でした。
全文書き起こし
私も勉強がてらやろうと思ったのですが、調べたらすでにされていましたので敬意を表しつつ紹介します。
動画をさらにかいつまんで解説
重要ポイントをかいつまんで解説されているブログがありましたので、敬意を表して紹介します。
ブログ主は外資系金融で株の仕事をされているプロです。
さすがプロですね。レイダリオの動画のシンプルな記述に、我々が新聞などで読み知る言葉で補足を加えるなどしてくださっています。動画の復習テキストとして最適と思います。
他の参考ブログ
色々な人がこの動画を見て知見を得たり、認識を確認したりしています。調べた範囲で紹介します。
動画のまとめが非常に参考になりましたので引用させていただきます。
- 所得より早く債務を増えさせない
収入と支出のバランス重要。収入が少なければ借金の利子すら払えなくなり、いずれ首が回らなくなっちゃうよって話。これについては違和感を覚える人は少ないと思う。- 所得を生産性より多く増えさせない
ざっくり言うと賃金を気軽に増やすなって話。労働者側からすると腹立たしいことこの上ないんだが、生産性、というか利益を上回って賃金を支払えばいずれ首が回らなくなりますよね注意しましょうってこと。経営者がこのバランスを取る事になるんだが、生産性を上げるための教育コストをケチってしまったがため人材不足が今になって表面化するとか、多分今後大きな社会問題になってしかも短期的な解決策は無いという事になりそうな予感がします。- 生産性を向上させるための努力を惜しんではいけない
生産性の向上が全てを好転させます。誰も不幸にならない、全ての解になる訳なんですがナカナカ難しい問題ではあろうかと。明らかにカリスマ経営者待ちになっているものの、一時のカリスマに石を投げる傾向が強い状況でして、まあ全部不景気が人の心を支配しているんだなあ、とも。
「 所得を生産性より早く増加させない。そうなると競争力が弱くなります」ということが分からなかったのが、具体的な説明のお陰で分かりました。
隣国の韓国の文政権が2018年と2019年に最低賃金を10%以上増加させる政策を実行したことで、企業の負債が大幅増加しているという、大変な状況になっているという状況ですね。
※2020年までの最低賃金1万ウォン達成は実現困難に(韓国:2018年9月)|労働政策研究・研修機構(JILPT)
「生産性を向上させるための努力を惜しんではいけない」
結論で述べられていますが、長期的な経済成長のために最も重要な要素が生産性を向上させるための努力ですね。私は教育機関で働いているので、この文言が一番刺さりました。
動画によれば、短期の負債サイクルには波がありますが、長期的には生産性カーブ(動画では直線ですが)に回帰します。短期的な負債サイクルがクレジットによるノイズであるとすれば、経済成長を決める最も重要な駆動力は生産性向上ということになります。
生産の三要素は、「ヒト(人的資本)・モノ(物的資本)・カネ(金融資本)」ですが、人的資本の増強は最も時間が掛かるものであることは言うまでもありません。国家百年の計という位ですから。シンギュラリティの時代を迎えたとしても人が生産性向上の旗手を務めることには疑問の余地がありません。したがって、価値を生み出し続けられる人材の育成をしていかなければなりません。
日本の問題の根源は人的資本にあると考えています。
そもそも子供を大事にしていないです。痛ましい虐待や、高齢者の運転で幼児や母子が死ぬなど貴重な子供が失われています。死んだ子供たちが将来生み出すはずだった多大な生産性を、虐待で死なす親たちや高齢者はどのようにしたら埋め合わせることができるのでしょうか?
また、私が普段見る学生の殆どから考えると、彼らは律儀にルールを守れる子供達ではありますが、オリジナリティのある発想に基づいた行動がなかなか起こせないです。大学には行きたいと考えているけれども、「大学では何を学ぶの?」という問いに答えられないのです。
子供がなるべく若い内に、具体的な目標をもって行動を起こせるように寄り添ってやるということが、子供の自立を願う保護者には最も重要なことなのだと考えます。
株価の今後の見通しはどうなのか?
1)昨今の世界経済の成長は中国国内の債務拡大によってもたらされてきたが、米中摩擦によって中国から米国および米国の同盟国への輸出が先細るのではないか?そうすると、中国の債務が所得を超過して成長が急減速するのではないか?
2)米国は中国に対して安全保障上の懸念を強めている。また貿易赤字の拡大を阻止して製造業の米国回帰を狙おうとしている。したがって、関税を掛けることは既定路線で、短期的に米国経済が冷え込んでも中国の成長を抑制しようとしているのではないか?
以下の高橋洋一の記事が参考になりました。
もっとも、報復関税に関して本当に勝敗がつくのは、関税によって自国の輸入製品の価格が上昇するときだ。実は、どのくらい関税をかけられるかではなく、関税の結果、価格が上昇するかしないか、が勝負の本質なのである。
物価指数をみれば一目瞭然
この観点からいえば、アメリカの勝ちは明白だ。というのも、米中貿易戦争以降も、アメリカの物価はまったく上がっていないからだ。インフレ目標2%に範囲内に見事におさまっている。
これは何を意味するのか。アメリカが中国からの輸入品に関税を課したら、関税分の10~25%程度は価格に転嫁されて、結果、価格上昇があっても不思議ではない。しかし、それでも物価が上がっていないということは、関税分の価格転嫁ができていないのだ。それは、中国からの輸入品が、他国製品によって代替できているということだ。価格転嫁ができなければ、輸出側の中国企業が関税上乗せ分の損をまるまる被ることになる(一方アメリカ政府は、まるまる関税分が政府収入増になる)。中国の物価はどうか。中国では、食品を中心として物価が上がっている。つまり、価格転嫁が進んでいるのだ。
これで、(現時点では)貿易戦争はアメリカの勝ち、中国の負けということになる。
もっとも、中国がアメリカからの輸入品(農産物)に関税をかけ続ければ、そのうちアメリカの輸出農家も影響を受けるだろうともいわれる。しかし、その場合には、アメリカ政府は輸出農家に何らかの形で補助金を出せばいい。なにしろ関税収入があるので、補助金対策の財源には困らないからだ。
米中貿易戦争はアメリカの勝利が明白か 中国の現体制「崩壊」も? - ライブドアニュース
米中の合意がなされない場合、アメリカのインフレ率の変化を見ていけば良いということですね。誘導目標の2%近辺が維持されるのであれば、あまり問題なし。
むしろアメリカは、リーマンショック後の2014年から家計負債が増加の一途を続けており、特に自動車ローンや学生ローンの問題が顕在化しています。延滞率が過去最高という報道もありますので、こちらの方が心配ですね。
自動車ローンの返済が少なくとも3カ月滞っている米国人がかつてないほど増えている。米国経済に成長余地がほとんどないことを示唆しているかもしれない。
90日以上返済が滞った自動車ローンの件数は昨年末に700万件超と、ニューヨーク連銀が調査を開始してからの20年間で最高となった。全体的に借り入れが増加する中で、自動車ローンの延滞率は2012年以来の高水準となった。https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-13/PMUD1P6JTSE801
FRBが利下げする観測がありますが、利下げで個人が借金しやすくなり、さらなる家計負債の増大に拍車をかけないかが心配です。
いずれにせよ、米国の株価が下落に転じる前に、景気回復期に資金を投入できるようなポートフォリオを作っていかなければならないと考えています。
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