私は、楽天・全米株式インデックス(バンガード社のETFであるVTI)をリスク資産のコアに据えて長期投資しています。類似するインデックスであるS&P500(eMAXIS Slim 米国株式(S&P500))やダウ工業株30種(iFreeNYダウ)は買っていません。その理由がいくつかありますので紹介したいと思います。
- VTI・S&P500ETF・ダウETF比較
- 投資信託(楽天・全米株式とeMAXIS Slim米国株式)の比較
- まとめ
VTI・S&P500ETF・ダウETF比較
VTI(Vanguard Total Stock Market ETF)基本情報
- 米CRSP社のCRSP USトータル・マーケット・インデックスをベンチマークとしている
- CRSP USトータル・マーケット・インデックスは米国内にある市場(NYSE, NYSE American, NYSE ARCA, NASDAQ, Bats Global Markets, and the Investors Exchange)で取引可能な、超大型、大型、中型、小型、超小型の株を構成銘柄としており、総数は約4000銘柄。これ1本でアメリカのほぼ100%をカバーするという、文字通りTotalなインデックス
- TOPIXなどと同様に時価総額比で構成されているため、超大型株の割合が高くなる
- 日本市場で言うならばTOPIX、JASDAQ、東証マザーズなどの中小型株もすべて含んでいると解釈できる
構成銘柄上位10位(2019年3月23日現在)
※https://www.bloomberg.co.jp/quote/VTI:US
上位10社が占めるファンドの割合は16.87%です。
上記の超大型株が約2割を占める一方、残り約8割で約3990銘柄をカバーしています。
直近配当利回りは2.13%です。
セクター割合(2018年9月30日現在)
セクター別に見ると、テクノロジー2割、金融2割、ヘルスケア、消費者サービス、資本財と続きます。上位5セクターで79.7%です。アメリカの産業構造をありのままに映し出しています。
引用:
http://www.crsp.com/files/crsptm1_quarterly_report-december2018.pdf
https://www.vanguardjapan.co.jp/docs/FS_VTI_JP.pdf
S&P500(SPY・IVV・VOO)基本情報
- 米国市場において、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が選定する500銘柄の内、流動性の高い大型株で構成される
- 時価総額比で時価総額比で構成されているため、超大型株の割合が高くなる
- 米国市場における日経平均株価のようなもの
構成銘柄上位10位(2019年3月23日現在)
※https://www.bloomberg.co.jp/quote/VOO:US
上位10社が占めるファンドの割合は20.49%です。
上記の超大型株が約2割を占める一方、残り約8割で約490銘柄をカバーしています。
直近配当利回りは2.27%です。
セクター割合(2018年9月30日現在)
※https://www.vanguardjapan.co.jp/docs/FS_VOO_JP.pdf
セクター別に見ると、情報技術2割、ヘルスケア1.5割、金融、一般消費財・サービス、電気通信サービスと続きます。上位5セクターで69.7%です。
ダウ工業株30種
- S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が選定する30銘柄の内、流動性の高い大型株で構成される
- 工業株であるが、金融や小売なども含まれる。ダウ輸送株30種との差別化という意味合いが強い
- 平均株価を指数化したものであるため、株価の高い銘柄(値がさ株)の動きに大きく影響される
- 銘柄数がかなり少ないことから個別銘柄の影響を受けやすい。例えばボーイングの株価が急落すると指数が引っ張られて下落する
構成銘柄上位10位(2019年3月23日現在)
※https://www.bloomberg.co.jp/quote/DIA:US
上位10社が占めるファンドの割合は53.03%です。残り47%を20社が占めています。
セクター割合(2019年3月21日現在)
※https://www.spdrs.jp/etf/fund/fund_detail_DIA.html#
資本財・サービス2割、情報技術2割、金融、ヘルスケア、一般消費財・サービスと続きます。上位5セクターで80.64%です。
長期パフォーマンス比較
2019年3月21日までの1年間
青がVTI、水色がS&P500、紫がダウ工業株30種です。
VTIとS&P500は同程度のパフォーマンスです。ダウはVTI・S&P500よりも高かったり低かったりでした。
2014年~2019年(5年間)
※Vanguard Total Stock Market ETF (VTI) Interactive Stock Chart
2%ほどS&P500の方がVTIよりも高かったです。またトランプ就任後からダウが伸びたことが分かります。
2008年~2019年(約11年間)
リーマンショック前からでは、VTIの方が少し高かったです。
2002年~2019年(約17年間)
VTIはS&P500よりも27%、ダウよりも17%ほど高かったです。17年間までの比較では、長期間保有するほどVTIのパフォーマンスが高かったと結論できます。
分散性の比較
- VTI:4000銘柄
- S&P500:500銘柄
- ダウ工業株30種:30銘柄
一般に、株式投資は分散するほど良いとされています。ダウは米国を代表する世界的な優秀な企業30社ですが、直近の例ではボーイング(BA)が737MAXの墜落事故による株価下落のため、インデックス自体がかなり落ち込みました。ダウの約10%はボーイングだからです。少し前までは、ゼネラル・エレクトリック(GE)も下げを引っ張っていました。このように、ダウは分散性が低いため、個別銘柄の影響を強く受けます。
S&P500も米国を代表する優秀な企業500社です。500社というのは分散性は十分と思われますが、米国株全体のうち超大型株と大型株のブレンドという位置づけです。
VTIは超大型と大型だけでなく、中型、小型と超小型の株も含んでおり、米国株でこれ以上の分散はできない位に分散させることができます。
VTIの小型株効果
米国株には、Russel2000という、米ラッセルインベストメント社が発表している小型株のインデックスがあります。このインデックスは米国に上場されている株で、時価総額が上位1001位から3000位までの銘柄の時価総額加重平均を指標としたものです。小型株指数の継続性を重要視しており、年1回銘柄組み換えをしています。
2001年からの18年間のパフォーマンスは以下の通りです。
桃色のIWMは、iシェアーズRussel2000のETFです。これを見ると、小型株効果が如実に表れています。小型株効果とは、
株式の時価総額が小さい小型株は、大きい大型株よりも収益率が相対的に高くなりやすい傾向にあること。理論的に説明できない相場のアノマリー(経験則)の一種。小型株は市場での注目度が低いため割安に放置されやすく、また今後の利益成長が期待できる株として収益が得られやすいとされている。
※https://www.nomura.co.jp/terms/japan/ko/A02486.html
ということで、株価収益率が相対的に高くなることによって株価の上昇が期待できます。
アメリカの中で新興国株式クラスを有しているようなものです。アメリカは日本よりもずっとベンチャービジネスが旺盛で、アメリカン・ドリームを実現するために沢山の人が会社を興しています。アメリカン・ドリームを体現した企業がRussel2000には沢山あるということです。かつてはAmazon.comやAlphabet(Google)もRussel2000構成銘柄であったはずです。
米国内の約4000銘柄をカバーするVTIは、Russel2000だけでなく、Russel2000もカバーしない超小型株をもカバーしますので、小型株効果を有すると言えます。実際、18年間のチャートではS&P500をアウトパフォームしています。
VTIがVOOより有利といえる理由は、この小型株効果が一番大きいです。
各ETFの経費率(2019年3月23日現在)
- VTI:0.04%(0.03%に引き下げ予定)
- VOO(S&P500、バンガード社):0.03%
- IVV(S&P500、iシェアーズ社):0.04%
- SPY(S&P500、SPDR社):0.09%
- DIA(ダウ工業株30種、SPDR社):0.17%
- IWM(Russel2000、iシェアーズ社):0.19%
- VTWO(Russel2000、バンガード社):0.15%
VTIはVOOに並び、最安値レベルです。また、同社のRussel2000ETFであるVTWOよりも経費率が低いです。ダウ工業株30種ETFであるDIAは小型株ETF並みに高く、選択肢として良いとは言えません。
各ETFの資産総額(2019年3月23日現在)
単位は1 billion USD(10億ドル)です。額が多いほど流動性が高いと言えます。
日本円は1ドル110円で換算しています。
- VTI:108.638(約12兆円)
- VOO(S&P500、バンガード社):106.393(約12兆円)
- IVV(S&P500、iシェアーズ社):167.163(約18兆円)
- SPY(S&P500、SPDR社):260.727(約29兆円)
- DIA(ダウ工業株30種、SPDR社):20.631(約2.3兆円)
- IWM(Russel2000、iシェアーズ社):41.965(約4.6兆円)
- VTWO(Russel2000、バンガード社):1.505(約1600億円)
歴史あるETFであるSPYやIVVには及びませんが、VTIはVOOと並んで十分な資産総額と言えます。
一方で、DIAはずっと少ないです。米国人はダウを魅力的なETFとしてあまり考えていないようです。つまり分散性を問題視しているのでしょう。個別で持っていた方が良いと考えているのかも知れません。
米国人は、株式インデックスの指標として、S&P500の方をずっと重要視しているのだといえます。とすれば、日本のマスメディアがダウの値ばかりを紹介することに疑問を持ちます。単純にダウの方が昔からあるからでしょうかね?
投資信託(楽天・全米株式とeMAXIS Slim米国株式)の比較
これまでにVTIの有利性を述べました。
日本の投資信託でVTIを買うには、楽天・全米株式インデックスが唯一の選択肢となります。楽天・全米株式インデックスは「VTIを買うだけのファンド」なので、円換算したVTIと同じパフォーマンスになることが理想ですが、実際は差が生じます。
ファンドの騰落率(2019年2月28日現在)
※https://www.rakuten-toushin.co.jp/fund/nav/rivue/pdf/rivue_M201902.pdf
インデックスとファンドとの間の騰落率は理想的には同じ値になります。設定来では1.4%もの乖離がありますが、最近1年間では改善しています。3か月間では0.1%程度の乖離で済んでいます。これについて、第1期の運用報告書(2018年7月17日)では
主な差異要因としては、マザーファンドにおける継続的な資金流出入に伴う投資先ETFの売買執行コストの積み重なりや投資先ETFからの分配金に対する課税、当ファンドにおける信託報酬等の要因が挙げられます。
※https://www.rakuten-toushin.co.jp/fund/annualarchives/index.html
と言及しています。本家VTIとの乖離は、100円単位で買付できる投資信託である以上仕方がなく、利便性にお金を支払っていると考えれば妥当なものであると言えます。
ファンドの実質コスト
こちらのブロガーさんが詳しいので、引用させていただきます。
6カ月の臨時決算から年率に換算した実質コストは0.245%(0.240%)。
全世界株式と同様、3カ月の臨時決算よりは上がっていますが、初回決算に比較し、0.067%(0.053%)低くなっています。
信託報酬以外のコストが0.075%(0.071%)ですので、十分許容範囲内と言って良いでしょう。(eMAXIS Slim先進国株式インデクスファンド等と同程度です)
競合する投資信託であるeMAXIS Slim米国株式(S&P500)は決算前なので分かりませんが、信託報酬0.1728%(2019年3月現在)に乗るコストがいかほどかということですね。いずれにしても、売買や税金などに掛かるコストはいずれのマザーファンドでもあまり変わらないでしょうから、同程度のコストであると推察します。
ファンドの純資産額
- 楽天・全米:370.78億円
株価の落ち込みで減らすこともありますが、設定以来右肩上がりなので、今後も資産額の増大が期待できます。
※https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/detail/?ID=JP90C000FHD2
2018年8月1日以降で205.26億円です。2019年1月4日以降で104.92億円です。 - eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):144.13億円
※https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/detail/?ID=JP90C000GKC6
こちらも基本的に右肩上がりです。
2018年8月1日以降で134.04億円です。2019年1月4日以降で61.03億円です。
楽天・全米の方が人気のようです。
まとめ
楽天・全米株式インデックスとeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)実質コストは同程度であるけれども、楽天・全米の方がeMAXIS Slimよりも小型株効果が期待でき、長期投資には有利であることを説明しました。
私は、S&P500ではなくVTIを買付しています。つみたてNISAとジュニアNISAでは楽天・全米を積み立てしています。つみたてNISAもジュニアNISAも20年間運用予定なので、米国株の小型株効果を期待して継続保有予定です。
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