本稿では、新興国株式の主要インデックスであるMSCIエマージングとFTSEエマージングを比較した上で、最適な低コストインデックスファンドを買うことを検討します。
各インデックスの構成国ー大きな差は韓国
MSCIエマージング
MSCI Emerging Markets Index割合(%)
引用:https://www.msci.com/documents/10199/c0db0a48-01f2-4ba9-ad01-226fd5678111
FTSEエマージング
上位5カ国以下は下の表を参照してください。
引用:FTSE Emerging Index - FTSE Russell
MSCIエマージングもFTSEエマージングも、構成国割合の30%以上は中国です。先進国は米国を買っているのと同じように、新興国株は中国を買っているようなものです。中国のGDPは今後も伸び続けることが予測されているので、その割合は今後も高くなり続けるでしょう。中国を買いたい人は新興国で間違いありません。
MSCIエマージングとFTSEエマージングにおいて、上位5カ国とその割合で大きく異なるのは、MSCIエマージングには韓国が13.7%組み込まれていることです。MSCIは2014年6月時点で韓国と台湾の先進国入りを見送っています。一方のFTSEでは、韓国は2009年に先進国に格上げされています。
両格付け機関で分類が異なる理由ですが、FTSEの説明によると、
- 韓国の相対的に強い経済的地位
- 市場品質の継続的な改善が見込まれること
3つの基準(通貨の兌換性、一部の株式譲渡、および一部の外資の取引)のみが不適格であり、それらは次第に改善が見込まれること - 市場実務者が韓国を中国やインドなどと同じ新興国グループに属しておらず、先進国と判断していること
(引用:FTSE Russell Blog: South Korea - Developed or Emerging?)
を重視した結果とのことです。市場における新興国と先進国の差は、経済的地位もさることながら、通貨の流通性と市場アクセス性が重要のようです。
FTSEの記述は全体的に、韓国を“believe”するという表現が目立ち、見込みで先進国扱いしているという雰囲気があります。なお、S&Pも同様に韓国を先進国に分類しています。
このように、インデックスを作る専門家の間であっても、韓国という国は新興国なのか先進国なのか意見が分かれているという現状のようです。
各インデックスのパフォーマンス比較
両者の株価(米ドルベース)を2005年3月1日基準で比較したものです。
※VWO Historical Prices | Vanguard FTSE Emerging Markets Stock - Yahoo Finance
※EEM Historical Prices | iShares MSCI Emerging Index Fun Stock - Yahoo Finance
2008年9月まではほとんど同じ利益率でしたが、以降はMSCIインデックスのEEMの方がパフォーマンスが勝っています。特に2017年以降は顕著に差が出ています。直近の2019年1月末までの時点では、値にして12~14%の差がついています。これは、韓国が組み入れられていることによるものです。Sumsung Electronicsなどの寄与によるものでしょう。
評価
2019年現在、
です。
韓国は先進国並みの経済発展を遂げましたが、現状で非常に厳しい少子化の一途をたどっており、経済的には人口オーナス期に突入しています。したがって、長期的には経済の縮小は免れないのではないかと思っています。
過去リターンを重視した選択では、現状でパフォーマンスが高いMSCIエマージングを選択しておくということかも知れませんが、今後はむしろパフォーマンスが低下する可能性もあります。
もしかしたら、ギリシャと同様に韓国で経済危機が再度起こるとすれば、FTSEも韓国を新興国に格下げするかも知れません。そういう意味では、長期ではFTSEエマージングもMSCIエマージングもどちらも変わらなくなるかも知れません。
パフォーマンスよりも韓国への否定的な感情の方が優先するのであれば、現状はFTSEエマージングを選択すべきです。
実質コストが安いインデックスファンド・ETF(2019年2月現在)
MSCIエマージング
- eMAXIS Slim新興国株式インデックス
信託報酬:0.189%
実質コスト:0.335%
純資産:131億円
【2019年 最新版】「インデックスファンド」コスト比較ランキング!信託報酬・実質コストがもっとも安いファンドは?|投資信託おすすめ比較[2019]|ザイ・オンライン
- iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF (EEM)
経費率:0.67%
総資産:33.5B USD
EEM 銘柄 - iシェアーズMSCIエマージング・マーケットETF 投資信託(ファンド)情報 - Bloomberg Markets
EEMよりもeMAXIS Slim新興国の方がずっと低コストです。
FTSEエマージング
- SBI・新興国株式インデックス・ファンド
信託報酬:0.180%
実質コスト:0.341%
純資産:13億円
【2019年 最新版】「インデックスファンド」コスト比較ランキング!信託報酬・実質コストがもっとも安いファンドは?|投資信託おすすめ比較[2019]|ザイ・オンライン - VWO
経費率:0.14%
総資産:61.3B USD
VWO 銘柄 - バンガードFTSEエマージング・マーケッツET 投資信託(ファンド)情報 - Bloomberg Markets
ややVWOの方が低コストですが、日本円で買ったり積み立てしたりする場合は、SBI・新興国株式インデックス・ファンドの方が利便性が高いでしょう。
まとめ
MSCIエマージングとFTSEエマージングを比較し、低コストなファンド・ETFを検討しました。大きな差は韓国の有無です。2019年2月現在では、韓国を組み入れているMSCIエマージングの方がパフォーマンスが高いです。
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